エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
『とはいえ、少し気が早すぎるとは思って、もう両親には話をつけてある』
「え……本当に?」
『ああ。だから、ウエディングドレスの形は、世間話のつもりで答えてくれればいい。あとからいくらでも変更はきくし、俺も鈴奈の好みを把握しておきたいと思ったから聞いたまでだ』
そう言ってくれて、少し落ち着いたは落ち着いたのだけれど……迂闊に答えたら、お母さんたちが動き出しそうに思えて怖い。
とりあえずしばらくは考え中でまだ迷っているという話にしておこうと心に決めていると、四宮さんが言う。
『しばらくは恋人としての時間を楽しみたいと思ってる。その中で、鈴奈の気持ちが追い付いてきたら徐々に話を進めていく方向でいいか?』
慎重に聞かれ、恥ずかしくなりながらもしっかりうなずいた。
「……はい。私でよければ」
真っ直ぐに前を見て答えた私を見て、隣にいる浅尾さんが安心したように笑い、手を振りバックヤードに戻っていく。
そんな浅尾さんを見ていると『今夜、会えるか? いつかのデートの仕切り直しをさせて欲しい』と告げられた。
言われてみれば、まともなデートもまだだった。
仕事帰りに食事に行こうとしたのに、氷室さんから電話が入って……結局そのままだ。
『都合は?』
耳触りのいい声に問われ、じわじわと胸の奥から嬉しさがこみ上げてくる。
ウエディングドレスは、やっぱりまだ早すぎるけれど……恋人の時間を重ねた先に見えるものがそうだったらいい。
ふたりのこれからを、四宮さんと一緒に、少しずつ大事に積み上げていきたい。
形が変わることがあっても、決して壊れないように大切に。
だから、まずは。
「私も会いたいです。……昴貴さん」
勇気を出して、一歩踏み込むところから始めよう。
昴貴さんの驚いた顔を想像するだけで、幸せで笑顔がこぼれた。
END


