君に恋した僕の話
栞は風に乗って舞い上がり、そこに歩いていた女の子に当たった。
しおりを拾おうと振り返った彼女。
一言で言うとすごく可愛らしかった。
華奢な体つきに肩まである艶やかな髪は毛先がふわりと巻かれている。
彼女の美しさに見とれてしまっていた。
慌てて彼女のもとへ向かう。
「これ、君の?」
うちの学校は男子はネクタイ、女子はリボンの色で学年を分けている。
リボンの色を見ると彼女は同級生のようだ、
「あ、うん」
彼女からしおりを受け取った。
「E組の沢田君だよね!私のこと覚えてる?」
そう言われて思い出した。
彼女は小学6年の時、僕が通っていた小学校に転校してきた。
1年という短い時間だった事もあり、彼女とは全くと言っていいほど接点がなかった。「小六の時の...」
と言いかけた時、
「そう!中井美春!覚えててくれたんだ!」
と彼女は答えた。
「二年になるのに学校で会うのは初めてだな」
と何気なく聞いてみたのだが、
「うん..」
と彼女は重苦しそうに答えた。
少し様子がおかしい。
「また、話しかけてね!」
と言うと彼女は走って行ってしまった。
彼女と別れた後、読書は諦めてある男子に会いにD組に向かった。
それは僕の友達と言える唯一の人。
「どうした?」
彼は小野寺圭一。同じ図書部に在籍する
《読み友》と言うやつだ。
俺は何気なく中井の事について聞きに来た。
「中井ってどんなやつ?」
「中井ってうちのクラスの中井美春?」
「うん」
「惚れたか?」
「ちっ、ちげーよ!」
いきなりこいつは何を言い出すんだ。
思わずオーバーな反応をしてしまった。
「じょーだんだよ」
と彼は笑っていた。遊ばれている気がする。
「あいつ、入学してすぐの頃から1年間不登校してたんだよ」
有力な情報を手に入れた。
昨年の話を振った時の反応の理由が分かった。
「他には?」
「んー俺はあんまりあいつの事は知らないんだよな」
「そうか、ありがと!」
「おう!またいつでも話に来いよ!」
小野寺に礼を言い俺は午後の授業のため教室向かった。
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