気まぐれな猫と俺様束縛系飼い主のちょっと危険で甘い生活
「いつものでいいのか?」「うん。」

広大さんは慣れた手つきで、グラスにライムを絞り、氷を入れ、ジン、
そしてトニックウォーターを注ぐと軽くステアして私の前に置く。

私はこの店に来たらいつもジントニックをオーダーする。

スッキリとした口当たりに、ふわりと広がるライムの香りに癒されて
いると、前に立つ広大さんが「最近はどうだ?」と聞いてくる。

メールで済む内容もこうして店に呼ぶのは、保護者としての親心か
少なくても月に一度はこうして連絡をくれる。

私はジントニックを飲みながら、遠い昔を思い出していた。

私は4歳までは、割と恵まれた生活をしていたように思う。
だが、その生活は長く続かなかった。
父親の経営していた会社が倒産・・・それまでの生活が一変した。

家は大きな庭付き一軒家からボロボロの古い二階建てのアパートに
父親も仕立ての良いスーツ姿から、汚れた作業服に変わった。
母親も主婦から、スーパーのパートの仕事をはじめたが、多額の借金の
返済に働いても生活は貧しいものだった。

両親はそんな生活に耐え切れずに、私を残してこの世を去ってしまった。

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