気まぐれな猫と俺様束縛系飼い主のちょっと危険で甘い生活

残された私はアパートから飛び出し、あてもなく彷徨っていた時、出会った
のが若き日の広大さんだった。

その頃の広大さんは、情報屋『カラス』として裏の世界にいた。

私は広大さんから、情報屋のスキルと護身術として様々な格闘技を身に着けた。
生きるためだったのか、それとも元々そういう才能があったのか分からないが
乾いたスポンジが水を吸うように、私は習得していった。

そして、5年前広大さんは以前から恋人だった静香さんと結婚して、Barを
開業、私は二人にお世話になっていたが中学卒業を機に一人暮らしを始めた。

CAT誕生は、私が中学になった時。
渋る広大さんにお願いして情報屋として仕事を始めた。

今でも、直ぐヤメテ良いんだぞと言われるが、意外と性に合っているらしく
今はまだ辞めるつもりはない。

「・・玲。」

広大さんの私の名前を呼ぶ声に、意識が現在に呼び戻される。

二杯目のジントニックと共に横に置かれたコースター。
私は、そのコースターを誰にも気づかれないようにそっとポケットにしまい込む。

それから他愛も無い話を広大さんとし、グラスを飲み干すと「またね。」と手を
振り店を後にした。