青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
あの時は、テンちゃんと彼のお兄さんが
が助けてくれた。
だけど今は、こんな真っ暗な路地に人が来るわけもなく、自力で回避するほかない。
首筋にあてられた浪川の手を振り払いたいのに、力が入らない私の手では、満足に避けられない。
…やめて、もう…触らないで…
また、あの時と同じようにただ黙ってきゅっと目を閉じることしかできない。
逃げたいのに体がピクリとも動かない。恐怖に焦りが混ざり、呼吸まで苦しくなってくる。
浅い呼吸を何度も繰り返す私を見て、浪川はますます気持ち悪い笑みを堪える。
「二股男なんかほっといて、みやびをもっと俺のものにしてやるからなぁ〜」
ふ、二股男!?なにそれ誰のこと……なんて声には出せず、私の腰に手を回してニヒニヒ笑う男が視界に入ると、限界がきた。
視界がふっと暗くなり、くらりと体が揺れ、ここで意識を失った後の地獄を想像した、その時。
「ちょっと、なにやってんのよ、変態!!その子から離れなさい!」
耳に飛び込んできた綺麗な声は、どう考えても女性の声だけど、可憐さの中に鋭さも交わり迫力があった。