青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
「落ちついたか」
嗚咽をもらしながら頷くと、テンちゃんの体が離れた。
今私の顔、絶対酷い。泣いたせいで目は腫れて、涙で化粧は落ちてるし、とても見せられる顔じゃない。
咄嗟に顔を手で覆って隠すと、それをやんわり取り払われた。
「遅くなってごめん。あとお粥美味しかった。シャワーも浴びたしスウェットも借りた。洗濯して返すな。鍵も持ってるぞ」
メモに書いたこと、全部やってくれたみたい。
嬉しくてつい顔が綻ぶと、テンちゃんの頬も緩んだ。
走ってきてくれたのか、髪が乱れている。
熱はもう無さそうだけど、昨日あんなに弱った姿をみているから心配だ。
「体調は、大丈夫なんですか?」
「お陰様でな。ありがとう」
にっこり笑って、頭に手を乗せられた。
良かった。……良くない。
「ぶ…部長、は…」
名前を出すのも恐ろしくたじろぐと、
「兄さんが連れてった。もうここにはいない。」と彼はやや緊張気味に言った。
そっか。部長を捻りあげたのだろう人はお兄さんだったんだ。タカノミヤの社長の。
「帰るぞ」
「…でも仕事…が」
再び顔が引き攣ったのがわかったのか、テンちゃんは立ち上がりざまに言った。