終わりから始まる恋
海斗が帰った後、窓の外をぼーと眺めていた。
夕日がゆっくりと沈んでいく。
こんなに夕日をゆっくりと眺めたのはいつぶりだろうか。

夕日を見ながら開けてなかった郵便物を一つづつ開けることにした。

先月使った光熱費のはがき、マンションのチラシ、ピザのチラシなど。
次の封筒で手が止まった。

結婚式の招待状だった。

同級生は25歳を過ぎてから途端に次々と結婚していく人達が増えた。

27…。そろそろ俺も身を固めてもいい時期か。
今まで結婚願望など無かったが、今は…。
まだ早い気がするが俺は出来たらあいつと。

そんな事を考えている自分に気づいた。
気づくと同時に照れが襲ってきた。

つくづく俺は。

はぁ〜と小さく溜息をつく。

彼女が笑う声、顔。
少し申し訳なさそうに下げる眉毛。
恥ずかしさに染める頬。
切なげに流れる涙。
少し怒ったように上げる目尻。

彼女の色んな表情が脳裏に流れる。

怒った顔も泣いた顔も笑った顔も…。
これから先俺が大切にしていきたい。
俺のこの手で守っていきたい。
俺だけを見ていて欲しい。

自分にも独占欲がある事に驚いた。
ちゃんと彼女の事が好きみたいだ。
今まで経験しなかったいろいろな感情に戸惑いながらもこの気持ちを大切にしていこう。

そう俺は小さく誓ったのだった。
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