終わりから始まる恋
いつも通りの朝を迎える。
いつもと違うのは隣に花守がいることだ。

花守と朝を迎えるのは2回目だが、1回目と全然違う。
今まで感じたことのない幸福感。
これが好きって事なんだろうか。

そんな事を思いながら彼女の寝顔を見ていた。
少しして彼女が目を覚ました。

「おはよう」
はにかむ彼女はとても愛らしかった。
彼女は俺の服の袖を掴むと、くいっと引っ張った。
バランスを崩した俺はベッドに舞い戻った。

「お、おい」
「まだ一緒にいたいの。それに杉田になら触れて欲しい」

耳まで真っ赤に染める彼女の頬に手を添える。
見つめ合いながらそっと口づけ。
恥ずかしがる姿を見て欲情しない男がいるのだろうか。否、俺も例外ではない。
今度はさっきよりも深く。次はそれより深く。深く。深く。

彼女の滑らかな腰のライン、胸の膨らみ、太腿の柔らかさを確かめる様に手を滑らせる。

しばらくの間、俺の部屋からは2人の吐息だけが響いた。

疲れて眠りにつく彼女を横目に考えていた。

好きな相手を抱くとこんなに満たされるのか。
今までなんて勿体無いことを。

また彼女に視線を戻す。
彼女の指にはいくつもの絆創膏が貼ってあった。どうしてこんなに怪我をしているのだろうか。

そうこう思っているうちに花守が起きた。

「おい、なんでそんなに怪我をしてるんだ?」
花守は一瞬、何を言っているか分からない顔をしたが直ぐに指の事だと分かり、背中に指を隠しながら
「これは料理の時…。慣れない事はするもんじゃないわね」と苦笑した。

俺の為に怪我を負ってまで苦手な料理をしてくれてたなんて。
それをいとも簡単に一蹴した俺はどれだけ酷い奴だっただろうか。

彼女はこの後、用事があると言って帰っていった。
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