Sweet break Ⅳ
いつも通り、クールビズで通常よりラフな感じの関君と、相変わらずのスーツ姿の落合さん。

そんなちぐはぐな組み合わせの割に、何故かいつものように違和感が感じられないのは、今日の落合さんが、常にかけている銀縁の眼鏡をしていないことと、いつも後ろに一つに束ねているだけだった髪を、括ってアップにしているからかもしれない。

スッキリと見えてる襟元のうなじが、グッと彼女の大人っぽさを増してみせた。

『ふふっ…』

唐突に落合さんが笑みをこぼすと、関君がすぐさま彼女を訝し気に見て『なんだ、その笑いは』と、眉を潜める。

『いえ、ちょっと、思い出してしまって』
『…思い出す?』
『ホテルの部屋での関さんを』
『おいっ』

瞬間、慌てたように周囲を気にする関君の横で、落合さんは『大丈夫です、誰も聞いてませんよ』と余裕の笑み。

近くの柱を背にしているこちらは、更に身を縮ませて、未だ通路に立ち止まったままの二人の会話に集中する。

『落合、お前まさかこのことを誰かに…』
『安心してください。こんなこと職場の皆さんに知れたら大事ですし、私の方だって…まぁ、いろいろ困りますから』

小さな溜息と共に、更に小さくなった、関君の声が続く。

『わかってるなら、こんなところで、軽々しく口にするな』
『すみません、つい…でも、あの時の関さんって、いつもとイメージが違いすぎて』

持っていた書類で口元を隠しながら笑いを堪える落合さんに、関君は『煩い』と、ぴしゃり。

でも、強めの叱責のわりに、その関君の声音からは…

『あ、もしかして、照れてます?』

揶揄うような落合さんの声。
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