Sweet break Ⅳ



午後4時過ぎ。

上司に頼まれたいくつかの雑用を終え、後は執務室に戻るだけの身になるも、自席に戻るのが嫌で、あえてエレベーターを使わず、遠回りをして階段を使う。

執務室からは一番離れているこの東側の階段は、他の階段に比べ解放的に造られていて、サイドの窓も大きく、私のお気に入りの場所。

この時間、窓からの陽は柔らかく、空調も整っていて、気持ちがいい。

木製の手摺に触れ、ゆっくりと階下へ降りながら、窓の外に見える都会のビル群を眺めていると、5階から4階に下る踊り場で、ぎくりと歩が止まる。

十数段降りた先に見える、4階フロアの側面の壁に、腕を組み明らかに誰かを待っている様子の関君がいたから。

一瞬自分を待ち伏せたものか…と思ったけれど、そもそも、私が上司に頼まれた行き先も、ましてやそこから戻ってくる経路だって知らない関君に、この場所が分かるはずも無い。

それよりも、ここで立ち止まっては、まるでこちらが意識しているみたいで癪に障り、すぐに歩き出すと、前を過ぎる時『お疲れ様です』と業務用の言葉だけをかけた。

『…スルーか?随分だな』

関君の声が吹き抜けの高さに反響し、その声にドキリと心臓が跳ね上がる。

『お前を待っていたに決まってるだろ』

反射的に、感情を押し殺したような声音でそう言い放つ関君を見れば、その目は真っすぐに私を捉え、発した言葉は自分に向けたものに違いなかった。

予期していなかった場所での対面に戸惑うも、その心中を読まれないようにと、冷静を装う。
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