君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「まだ、バスが来るまでに時間が少しあるね。」



バス運行予定表を見、中野 神弥に視線を移す。


決められた恋愛をするのか、と質問してきた中野 神弥は私がその質問に答えると、暫く押し黙っていた。


が、ゆっくりと顔を上げ、口を開いた。



「俺の親父…海外で医療支援してんだ。」



…は?


何でお父さんの話?



「で。母さんも親父についてってっから、俺は祖父さんに世話んなってんだけど」


「…だけど?」


「孫が俺1人だからって、自分の跡を俺に継がせたいみたいでさ。」



中野 神弥は一度空を見上げ、ふっと笑うと私に視線を合わせる。



「俺に俺が好きでもねー女と結婚しろってぬかしやがった。で、良家のお嬢と結婚させるのは次期理事長として体裁を整えていくからだとよ。」
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