君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「体裁…」



いくら将来の為と言われても、よく知らない人と結婚っていうのは…私は嫌だなぁ。



「祖父さんに〝俺は嫌だ〟って初めて反抗したのは高校3年だ。で、大学入っても言われ続けてたけど…ある女としか結婚しねぇつって黙らせた。」


「ある女?」


「……分かんだろ。アンタだよ、山崎 花菜先輩。」



クスリと笑う。



「俺らの入学式で、桜を纏って歩くアンタを見掛けてさ。ガラじゃねぇけど、一目で惚れた。」


「けど…初めて会った時…」



一人暮らしを満喫したいから出てけって…



「…そんなん、喜びながらアンタを受け入れてたら、何だコイツって思われんだろ。」



不貞腐れたように言う、中野 神弥。


つい、笑ってしまった。



「アンタの魂胆はよく分かんないけど、とにかく私を好きだって言ったのは本気だったんだね。」

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