君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
私が席を離れると同時に会場内に響く歌声。


何だ、中野 神弥のが上手いじゃん。


…凄く満たされる歌声だったし。





「いつの間にか、あの子のことばっかり考えてら。」





ふぅ、と溜息を吐く――…






「花菜!」






どうして。


こんなに人がいて。


こんなに騒がしいのに。


どうしてあの子の声だけが届くのかな。






「待てよ、花菜。」






歩いていた私の腕を掴む。






「何よ、放して。」


「ヤダ。」


「放しなさい。」


「…花菜、妬いただろ。」


「!!」





ヘヘッと悪戯っ子のように笑う。
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