君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「……綾香。大人メイクっていうのはこんな風にするんだよ。」


「おぉーっ。さっすが花菜ちゃん!」



やっと通常通りの顔に戻った綾香。


きゃあきゃあ言っている彼女から視線を中野 神弥に移すと、明らかに不機嫌な顔。



「あの…中野くん?」


「…何ですか、先輩。」


「何で怒ってるの?」


「別に…怒ってないですよ。」



……凄く怒ってんじゃない。


さっきまで素だったくせに。



「あれー?ねぇ、花菜ちゃん。私たち、あの人たちに睨まれてるよー?」


「……え。」



綾香の指差す方向には、明らかに親衛隊の雰囲気を醸し出している方々。


またバトルになんの…?


なんて身構えたのも束の間、中野 神弥が無言で立ち上がって彼女たちの方へと向かっていった。


そしてそのまま彼女たちと歩き去る中野 神弥。


笑顔で中野 神弥にまとわりつく彼女たちと反対に、私は綾香の前なのに笑うことを忘れていた。
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