君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
いやいやいや。


そんなことくらいで気まずくなるようなタイプじゃないでしょ。



――「……帰ってたのかよ。」


「?!」


自問自答をしていた私の後ろから、嫌味たっぷりで言う中野 神弥の声が届く。


凄いな、この玄関扉。


全然音がしないじゃん…


中野 神弥がいつ帰ってきたのか…気づかなかった。



「帰ってた…けど。」



まだ不機嫌な中野 神弥の雰囲気に気圧されながらも答える。



「あんた…俺に一目惚れしてたんだ?」



背の高い中野 神弥が腰を折って自分の目線を私の目線に合わせる。


一目惚れしてたんだ?って…


どうやって答えればいいんだろ。


うん、してた。


…なんか告白みたい。


ううん、するわけないじゃん。


…これじゃあ、嘘になっちゃう。


中野 神弥に一目惚れしたのは事実だし。


ここは本当のことを言おう。



「…うん、したよ。」
< 61 / 385 >

この作品をシェア

pagetop