君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「出てってくんない?」


「え?」



出てけ?


今?


こんな急に?



「そーよ、出てってよぉ。邪魔よ、あんた。」



平塚…さんはさっきまでの弱々しさはどこへやら、強気で言った。


そっか…


私、邪魔なんだ…


私はゆっくりと立ち上がると、携帯と財布と化粧ポーチの入った鞄を持って扉の前に立った。



「………さよなら。」



そう言って振り返ると聞こえていないのか、中野 神弥はリビングへと戻っていく。


私は少しの胸の痛みを感じながらも、扉をそっと開けて廊下に出た。



「中野 神弥の馬鹿…」



いきなり出ていけとか…


いつもご飯作ってあげてるのに。


恩を仇で返すってこのことだわ。


私は憤怒しながらも、着の身着のままで行く宛もない歩みを開始した。
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