ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
私が帰省している時は、朝、はるちゃんが起きたらメッセージをくれた。
仕事中でもメッセージは欲しい、と言われて時間は気にせず送っていた。
夜は、寝る前にどちらかから電話。大抵は、はるちゃんが待てなくてかけてきた。
はるちゃんの帰省中は、朝、起きたら私からメッセージを送る。
昼間は、はるちゃんが仕事の邪魔をしてはいけないと思っているらしく、電話もメッセージもよこさない。私は別にいいよ、と言ったんだけど、際限なくなるから、と我慢していたようだ。
夜は、はるちゃんから電話が来る。
そうやって何日か過ごして、はるちゃんの夏休みが終わる日の金曜日。
予定通り、はるちゃんが帰ってきた。
一旦家に荷物を置いて、会社まで迎えに来ていた。
恥ずかしいから、私の最寄駅で待ち合わせにしたはずなのに。
ついでにお土産を置いて行くと言って、デスクまで来て、私を待つからと休憩スペースに行った。
私は、みんなの生温かい視線を感じながら、仕事を終わらせて、定時で上がった。
休憩スペースでコーヒーを飲むはるちゃんを見るのは久しぶりで、入口で思わず見とれてしまっていると、背後から小さな声がした。
「カッコいいですね、須藤さん」
ハッとして振り向くと、久保田君が立っている。
「見とれちゃうのもわかりますよ」
「あ、あの、そういうんじゃ……」
言っているうちに、顔が熱くなる。
久保田君はクスッと笑った。
「飲み物買いに来たんですけど、邪魔すると須藤さんに殺されちゃうんで後にします。お疲れ様でした」
さわやかな笑顔でそう言うと、フロアに戻っていく。
その背中を見送っていると、はるちゃんが気付いてやって来た。
「千波さん、終わった?帰れる?」
「うん、お待たせ」
久しぶりの笑顔。
嬉しくて、仕方ない。
2人で並んで歩くのも久しぶりだ。
「実家は楽しかった?」
「うん、友達とも会えたし、墓参りも行ったよ」
「そっか」
はるちゃんは、地元で床屋さんにも行ったらしく、髪の毛が短くなっている。
別人みたいで、なんだかドキドキしてしまう。
目が合わせられなくて、つい顔を背けてしまった。
「千波さん、何かあった?」
はるちゃんが何か誤解したのか、険しい表情をしている。
「俺がいない間に何かあったんなら、ちゃんと言って」
何もないから、慌ててしまう。
「違う違う、何もないよ。あの……髪、短くなったから、なんか新鮮で……」
そう言ったら、はるちゃんの顔が赤くなった。
「ごめん、俺、勘違いした」
私は首を振る。
「私こそごめんね、変な態度とって。なんか、別の人みたいでカッコ良かったから」
「え?」
慌てたから、つい普段は恥ずかしくて言わないことまで言ってしまった。『カッコいい』なんて、しょっちゅう思ってるけど言ったことはない。
「あ、あの……ごめん、忘れて?」
あはは、とごまかしたら、はるちゃんは更に顔を赤くして、ぼそっと言った。
「……覚えとく」
私も、多分顔が赤くなったと思う。
2人して赤い顔で、そっぽを向き合ってて。
そのまま、電車に乗った。
いつもは電車を降りてから手をつなぐけど、今日は電車に乗ったら、はるちゃんが手を取って、指をからめてきた。
驚いて顔を見上げると、照れくさそうに笑った。
「やっとつなげた」
私も嬉しくて、つないだ手に少しだけ力を込める。
やっぱり恥ずかしくて、電車を降りるまで顔が見られなかった。