転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
「なにがですか?」とサマラがあどけなく聞き返すと、ディーは腕を組んで顎を手に当て考え込んでしまった。
「執事からの手紙に書いてあった内容とだいぶ違うのだが……」
独り言のように呟いたディーの言葉に、サマラは内心(でしょうね!)と苦笑した。
今までのサマラは手が付けられないほどのわがままお嬢様だったのだ。執事もそのことを事細かにディーに手紙で報告していたのだろう。
けれど今日からは違う。サマラは生まれ変わったのだ。正確には生まれ変わったことに気付いたのだ。
そして彼女は十六歳で破滅エンドを迎えないため、生きる手段を見出したのだ。そう――〝いい子になって父親に媚びまくって味方につけ、大陸最強の魔法使いである彼に庇護してもらって生き延びよう!〟――と。
(サマラを嫌ってるディーを味方につけるのが難しいことくらい百も承知よ! でも私には前世の記憶がある、『まほこい』をしつこく周回し、ファンブックを読み込みまくった記憶が! それに十六歳で出会う他のキャラに比べて、ディーなら今日から十一年間たっぷり時間をかけて落とせるもんね)
完璧な計画に、サマラはディーに見えないように顔を背けてニシシと笑う。そしてカレオの方をチラリと見やってから、さらに口角を持ち上げた。
(しかもカレオも一緒だとはラッキーだったわ。カレオもついでに落としちゃうもんね。味方は多いに越したことないし。それに気難しいディーもカレオを媒介にすれば落としやすくなるかも)