転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

ゲーム開始時に年齢が三十三歳だったことを考えると、今はまだ二十二歳。ゲームの立ち絵よりかなり若い印象だ。

(ディーの帰郷、カレオも一緒だったんだ……)

カレオはディーの数少ない友人だ。共に命を懸けた旅をしたことで絆が生まれたらしい。今は王宮で若手兵士の育成を務めているはずだが、どうやらディーが領地へ帰るのに供についてきたようだ。

(将を射んと欲すれば先ず馬を射よ! これってかなりラッキーじゃない!?)

サマラはさらにカレオにも笑顔を向けると、礼儀正しく膝を曲げこうべを垂れた。

「カレオさまですね。お目にかかれて光栄です。アリセルト家の長女、サマラです。今日はおもてなしをしますので、ゆっくりしていってくださいね」

またしても熟年の女主人のように愛想よく礼儀正しさを見せつけたサマラに、ディーと執事たちが目をまん丸くする。カレオは精悍な顔をニコニコにほころばせ、「可愛いなあ。まるで小さな女主人ですね」とサマラを褒めたたえた。

サマラはメイドの方を振り返ると、「ブラウニー、居間にお茶の準備を。晩餐の時間までおもてなしをして」と命じた。メイドは驚きのあまりしばし固まっていたけれど、すぐに我を取り戻し「かしこまりました」と足早に準備にとりかかりに行った。

「おとーさま、今日の晩餐のメインは鴨肉のシチューだそうですよ。デザートにはクロイチゴのワインゼリーもつけてくれるって。楽しみですね」

子供らしい無邪気な笑顔で振り向いて言ったサマラに、ディーはついに「……どうなってるんだ」と不可解な気持ちを口から零した。

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