転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
リンピン王国は武芸に秀でており、特に王家は剣の武芸に突出していた。彼が東国由来のシミターと呼ばれる曲刀を持ち、さらに稀有な腕前を持っているのは血筋だろう。もちろん彼は王家の血を引くことをひた隠しにし、ゲームではリリザにしか打ち明けないのだけれど。

「おとーさまの領地も素敵だけど、私はカレオさまの国もきっと素敵だと思うわ。だって海がたくさんあるのでしょう? 見てみたいなあ。いつか、カレオさまの国へ連れていってくださいね」

サマラが無邪気に言えば、カレオは嬉しそうに頬の血色をよくして口角を上げた。

「もちろんですよ。イルカの泳ぐ海も、砂漠のラクダも、満天の星空も、全部サマラ様に見せてあげます。いつか必ず……そうですね、サマラ様が旅が出来るくらい大きくなったら一緒にいきましょうね」

今ではバリアロス王国民になり領地も持っているとはいえ、やはり故郷への想いは格別なのだろう。カレオがこんなに目を輝かせて何かを語るのは初めてだ。つられてサマラも嬉しくなってくる。

しかし、カレオはふと圧を感じると「あ、でもその前に……」と顔を引きつらせた。

「長旅をするには閣下のお許しを得るのが先ですね」

カレオの言葉で隣に座るディーをハッと振り返ったサマラは、彼の眉間にいつもより皴が一本多いことに気付いた。

(あ、ヤバい。カレオとふたりだけで盛り上がっちゃったから、拗ねちゃったかな)

ディーはサマラが微妙な表情でこちらを見ていることに気付くと、「……俺の手を煩わせないのなら、勝手にどこへでも行けばいい」と言って顔を背け、窓の外を眺めた。

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