転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
魔法使いだったナーニアも将来は宮廷魔法官になるべく、魔法研究所に弟子入りした。ディーはそのとき十七歳だったがすでに大陸一の魔法使いとあがめられ、研究所の指導的立場にあった。そんな彼が指南したのが、ナーニアだったのだ。

ナーニアは誰にでも優しく、それでいてロマンチストで夢見がちな女性だった。ディーはナーニアの癒されるような笑顔に心惹かれ、いつしか彼女を深く愛するようになっていった。

人嫌いの彼が誰かに心を開くのは、きっと勇気のいったことだろう。ナーニアはそんな彼の想いを受け入れた……かのように、ディーにも周囲にも見えていた。

その後、大陸に巨大竜が現れ、ディーは討伐としてカレオたちと共に駆り出された。ディーは命懸けの戦いに出る前に、ナーニアに結婚を申し込んだ。『必ず生きて帰る。だからそのときは――俺を夫として迎えて欲しい』と。
そして一年後、無事に生還した彼はナーニアを娶り、翌年には子を儲けたのだった。

しかし、ディーの愛と幸せはサマラの誕生と共に暗転する。
自分とも妻とも違う髪と瞳の色の赤ん坊。そして、逃げ出したナーニアが残した、初めて本心を綴った手紙。
そこには『本当はずっとあなたが怖かった』とディーを拒絶する言葉が綴られていた。

ナーニアはずっと幼なじみの男のことが好きだった。しかし気持ちを確かめ合う前にディーに愛を告げられ、彼女は当惑した。ディーは大陸一の大魔法使いだ。将来は魔法大臣になるとも噂されている。親が魔爵とはいえしがない魔法使いでしかないナーニアにとって、それは身分差を盾にした断れない求愛も同然だった。

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