転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
そして人目を忍んで育まれた〝真実の愛〟は、彼女に子を宿した。最後は『すべてを捨てて俺と逃げよう』と愛する男から差し伸べられた手を取って、ナーニアはついに恐ろしい夫のもとから逃げ出し幸せを掴んだのだった。
――なんの罪もない夫と子供を不幸のどん底に残して。
(……つくづく最低だな、私の母親)
ディーとナーニアのなれそめを思い出して、サマラは実に嫌な気分になった。自分がナーニアの血を引いていることに嫌悪さえ覚える。
(それにしても……。ディーは嫌じゃないのかな、私に魔法を教えるの。他人ならまだしも、私に魔法を教授しててナーニアのこと思い出しちゃったりしないのかな)
今まで無意識に父親のトラウマを抉っていたのではないかと、サマラは心配になってくる。
見つめていた小さな手を握り込んで顔を上げると、ディーに向かっておずおずと口を開いた。
「……おとーさまは私に魔法を教えるの、嫌じゃありませんか。だって……私は魔力が低いし、なかなか妖精も力を貸してくれないし……」
さすがに『私に教えていると逃げた元妻のことを思い出しません?』とは言えず、最後の方は言葉をモゴモゴと濁してしまう。
するとディーは珍しく間髪入れずに「何を言っているんだお前は」と返した。
「くだらない心配をするな。魔力はそのうち伸びると言っているだろう。俺が無駄な教授を嫌々している馬鹿だとでも思っているのか」
ものすごくまっとうに返されてしまい、サマラは思わず「ごめんなさい」と愚問をぶつけたことを謝った。
気遣うつもりが却って彼を怒らせてしまったようで、サマラはしょんぼりと俯く。
――なんの罪もない夫と子供を不幸のどん底に残して。
(……つくづく最低だな、私の母親)
ディーとナーニアのなれそめを思い出して、サマラは実に嫌な気分になった。自分がナーニアの血を引いていることに嫌悪さえ覚える。
(それにしても……。ディーは嫌じゃないのかな、私に魔法を教えるの。他人ならまだしも、私に魔法を教授しててナーニアのこと思い出しちゃったりしないのかな)
今まで無意識に父親のトラウマを抉っていたのではないかと、サマラは心配になってくる。
見つめていた小さな手を握り込んで顔を上げると、ディーに向かっておずおずと口を開いた。
「……おとーさまは私に魔法を教えるの、嫌じゃありませんか。だって……私は魔力が低いし、なかなか妖精も力を貸してくれないし……」
さすがに『私に教えていると逃げた元妻のことを思い出しません?』とは言えず、最後の方は言葉をモゴモゴと濁してしまう。
するとディーは珍しく間髪入れずに「何を言っているんだお前は」と返した。
「くだらない心配をするな。魔力はそのうち伸びると言っているだろう。俺が無駄な教授を嫌々している馬鹿だとでも思っているのか」
ものすごくまっとうに返されてしまい、サマラは思わず「ごめんなさい」と愚問をぶつけたことを謝った。
気遣うつもりが却って彼を怒らせてしまったようで、サマラはしょんぼりと俯く。