転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
すると隣の席から頭の上にポンと手を置かれ、サマラはディーの顔を見上げた。

「……自信を持て。お前はこの大陸一の魔法使いの娘だ」

サマラは一瞬耳を疑った。そんな言い方、まるで本当に血の繋がった娘だと思ってくれているみたいじゃないか。

(あれ? ディーってもしかして……結構私のこと気に入ってる?)

そんな希望が胸に湧いてきて、サマラはうっかりニヤニヤしてしまいそうになる。
けれどこらえきれず「うっふっふ」と不気味な笑いを零してしまったサマラに、ディーは「なんだその笑い声は」と怪訝な顔をしたあと、「まったく。俺の娘は変わり者だな」と自分も目を細めた。



馬車で半日ほど走ると桟橋のかかった運河に出た。
用意されていた船はサマラが想像していたより小さい。船室はあるが、帆はない。前世でいうところの小型漁船に似ていた。海ではなく川を行くことを考えると、これぐらいが最適なのだろうか。

「ここからは御者も従者もいらない。ふたり旅だ」

桟橋から船に渡りながら、ディーはそう言った。

(だからこんなに小さい船なのかな?)

サマラを先に船室へ入れると、ディーは接岸のためのロープを外し船の先端に立った。足もとに香炉を置きユーカリのお香を焚く。そして先端に大きなエメラルドのついた杖を持ち、意識を集中させた。

「古き魔法使いの名において命じる。西の女王とその子ら、逆巻き道を開き、荒らぶり災いを滅せよ。彼の地の果てに我を運ぶまで」

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