転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
(ふーん。結構過ごしやすそう。でもトイレとお風呂はどうするんだろう? それに食料も積んでなかったような?)

不思議に思いながらサマラが前室に戻ると、ディーが濡れた外套を脱いで火の精で乾かしていた。

「ねえ、おとーさま。このお船ってお手洗いはないのですか?」

まさか川に放流しろなんて言わないわよね?と少しハラハラしながら尋ねれば、ディーは「必要ない」などと驚きの答えを返してきた。

(あれ? ディーってトイレ行かない人だっけ? 美形キャラはトイレをしないってお約束? でも私は必要なんだけど)

困惑しているサマラに、ディーは近づいてくると手でそっとサマラの目を覆った。

「寝ていろ。その間、体の活動を最低限まで抑える。王都に着いたら起こしてやる」

「え? 寝てろって、まさか三日間も――……」

言い終える前に、サマラは夢の世界へと落ちていった。眠りの魔法をかけられたらしい。くずおれる体を、ディーが受けとめ抱き上げる。

こうして、楽しみにしていたディーとの船旅は目が覚めたら終わっており、サマラは娘の子供心がわからない父に少しむくれたのであった。



王都にあるディーの邸宅は、王宮敷地内にあった。
バリアロス王宮の敷地内には王族が住む宮殿の他に、魔法研究所や自然公園、兵士の訓練場、図書館や美術館など様々な施設がある。
ディーの邸宅は魔法研究所のすぐそばにあった。自然公園とも隣接している王宮敷地の最奥だ。

「わぁ……、ここがおとーさまのお屋敷なのね」

アリアン州の広大な屋敷に比べるとさすがに小さいが、王宮内にあるせいか外装も内装も豪華だ。
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