居酒屋ーーーキスをあげよう―――
今、彼女は自然と、ボロボロ、と涙が止まらなくなり、直樹はぽん、と頭に手を添えた。それから、直樹はニコッと笑うと、『―――君は・・・こんなに、頑張っているのになぁーーー』と言う。彼女は眼を丸くすると、直樹は満面な笑みを浮かべていた。まるで陽介に似ている、流石、親子だ―――そう思った。此処の―――泉家はとても良い人達―――彼女はゴシゴシ、と涙を拭うと、『―――私・・・大学と両親の事は、忘れた―――そう言いたいけど、今迄の自分から、脱皮したいから、此処に居候ぽく、いるんです。でも、新しい家族が出来たから、幸せになりたい。』と言った。その言葉に、彼は驚いたように、目を丸くした。
『―――菜月・・・息子を・・・息子を頼んだぞ?良いな?』
其の言葉に、彼女は一瞬、ドキリとしたが、『―――任せてください・・・』と答えた。直樹は笑うと、菜月は無表情だった。一瞬、寂しそうに見えたのは、間違いだったのだろうか?―――。
どういう事だ?―――
彼女はハッと我に返ると、ふるふる、と、頭を振ると、『―――気のせいだろう。』と、思った。
兎に角、ホワイトデーを乗り切り、美味しいお菓子を頂いた。
『―――陽介・・・ありがとう・・・』
家族での食事の時に、直樹は豪快に笑っていた。
『―――本当に・・・陽介の嫁が、菜月で良かった。』

―――ありがとう―――

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