独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 気づけば朝になっていて、いつも通り海斗さんは朝食を作っていた。帰ってくるまで起きていようと思っていたのに、いつの間にか眠っていたみたいだ。

 海斗さんはいつ帰ってきたのかわからない。こんなこと一緒に暮らすようになってから、初めてだ。

 思えば、村岡物産での仕事は営業だし、本来は染谷ケミカルホールディングスの次期経営者。

 仕事の付き合いで会食もあれば、女性がいるお酒の席にいくのだって、仕事のうちだろう。

 村岡物産にいた頃の営業の染谷さんとしてだって、モテていた。本来の姿を知っている人たちは、もっと放っておかないだろう。

 急に海斗さんが、遠い存在に思えてしまう。

「由莉奈。怒らずに最後まで聞いてほしい」

 かしこまって言われ、緊張気味に向かい合う椅子に座る。

 なにを言われるのだろうと、頭はぐるぐると嫌な想像しかしない。

「プレビアス社は、染谷ケミカルホールディングス傘下の会社だ」

 固い会社名を言われ、些か拍子抜けする。

 プレビアス社。どこかで聞いたことがある企業名。どんな会社だったかなと、記憶を辿る。
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