独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 お昼休みは普段交代で取っていて、今日は翼さんと同じ時間になるように変更してもらった。

 お昼になりメールを開くと、翼さんと一緒に内容を確認する。

〈海斗から聞きました。誤解です。食べてみようと思えたのは、由莉奈。あなたの勧めがあったから〉

 それは、海斗さんの婚約者だから?

 その言葉が喉まで出掛かって、口を噤む。

 経緯を知らない翼さんに、今朝の会話をかいつまんで説明する。

「あの彼、ただ者ではないとは思っていたけど……。そっか、やっぱりお嬢様は大変だな」

 感心したように頷かれ、力ない笑みを漏らす。

 そして、まだ続く英文メールを読んでいく。
 
〈翼さん、川瀬の和菓子が、美味しいのも本当です。私が選んだのは、川瀬の繊細な芸術〉

 真っ直ぐに書かれている褒め言葉に、翼さんは声を詰まらせる。

「いや、なんていうか、嬉しいね。ここまで褒められると少し照れるけど」

 私も大好きな川瀬の和菓子が褒められて、嬉しい。まるで、自分のことのように誇らしい。

 翼さんは頬を指でかきながら、「あとは由莉奈ちゃんに任せるよ」と朗らかに告げる。

「こんな風に言ってもらえて、応えたい気持ちはあるけど、由莉奈ちゃんと彼との問題も絡んでいるから、よく話し合って」

 決断を一任され、責任重大だ。

 怯んでいる私の気持ちを汲み取ってか、翼さんは付け加える。

「正式に決まったわけじゃないから、まだ店長に話してはいない。安心して」
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