独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「後々、俺が継ぐ会社だ」

 想像していた内容であったのに、改めて声に出されると頭を鈍器で殴られたくらいの衝撃がある。

 染谷ケミカルホールディングスに比べれば、うちの会社なんて……と考えてから、ああだから父は『会社も絡む話』とお茶を濁したのだ。

 私には兄がいて、村岡物産はその兄が後継者だ。そのせいもあり、経営についてほとんど知らされていない。

 それでも村岡物産がどこかの企業と合併するだとか、吸収されるかもしれないだとか、その程度の噂話くらいは知っている。

 その相手が染谷ケミカルホールディングス?

 頭が混乱して、状況を整理できない。ただ次の言葉を聞き、カッと顔が熱くなった。

「婚約破棄の話も、聞き及んでいるよ」

 落ち着き払った態度が白々しく感じられ、精一杯非難する気持ちを込めて睨みつける。けれど、そんなもの意に介さない余裕な表情で、海斗さんは話し続ける。

「社長は自分の駒にしたかったから、婿にとりたかったみたいだが、中途半端な男を選んだばっかりに失敗したと気付いたんだろうね。娘の結婚相手には、一流の男がいいと気付いたらしい」

 この場合の社長は父のことだろう。

 どうして染谷ケミカルホールディングスの御曹司が、村岡物産の社員として働いているの?

 そんな疑問が、小さなことに思えてしまう。
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