独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
海斗さんと別れ、自宅に戻る。父にひとこと物申したい心持ちだったのに、わかっているのか留守にしていた。
そして、そのまま準備をして家を出る。
玄関の前には、シルバーの高級車が止まっている。もちろん運転するのは海斗さんだ。
レンタカーの彼しか知らないから違和感を感じるのに、美しい所作や育ちの良さが前面に出ている今の海斗さんにはしっくりくる。
なにより、石垣島で見ていたラフな格好からガラリと違う、会食のために着てきた三揃いのスーツが決まり過ぎていて、目のやり場に困る。
送り出してくれる母に爽やかに「由莉奈さんをお預かりします」と好青年の顔で挨拶をしている。全部全部、作られたものなのに。
料亭で黙り込んでいると、縁談を勧めるかどうかは置いておいて、一緒に暮らさないかと提案された。
実家を出るのなら『海斗さんと暮らす』という条件付きなのだから、承諾しなければ一人暮らしは出来ない。そんなもの、もはや一人暮らしではないけれど。
仕組まれたレールにまんまと乗っているみたいで気に入らなくとも、今の私にそれ以外の選択肢はなかった。
結局、私は父の手のひらの上で、踊らされていただけだった。私の意思で関係を持ったという唯一の心の支えだった海斗さんの存在も、『私の意思で』と思い込まされていただけで、全て父の思惑通りだったのだ。