独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
衣装部屋と見まごうウォーキングクローゼットに荷物を置かせてもらい、部屋を案内され、鍵の使い方なども教わる。
「住まわせてもらうのですから、家事は任せていただけますか?」
「いつまでも相手の人と対等でいたい」
「え?」
なにかの文を引用したような口ぶりに、なにを言いたいのだろうと訝しむ。
「由莉奈の結婚観。俺も賛成だ。一人暮らしは長いから、一通りは出来る」
「家事全般?」
「ああ。ガッカリした?」
「ガッカリ?」
こんなところまで隙がないのかと、そちらの面では確かにガッカリしたかもしれない。
「周りからは、だから結婚できないんだと言われるよ。なんでもやってしまうからね。でも、結婚ってそういうものじゃないだろう?」
当たり前に語られる価値観。
嫌だよ、もう。どうしてこの人は、こんなにも人間が出来ているのだろう。