ねえ、私を見て
タクシーは順調に、私の家へ向かっている。

こんな時日奈人君はいつも、私の手を握ってくれていた。

なのに、今日は握ってくれない。

手が寂しい。


「着きましたよ。」

家に着くと、タクシー代を払った日奈人君は、一緒に降りた。

「一緒に降りるの?」

「一人で帰せないだろう。」

そう言うと、タクシーのドアは閉まり、元来た道の方へタクシーは行ってしまった。

「行こう、何号室?」

「304。」

「OK。」

マンションの出入り口を開け、エレベーターホールに着いた時だった。

「くらら?」

振り返ると、夫がいた。

「今帰って来たのか?」

何も知らない夫は、私達の元へ近づく。

「旦那さんですか?」
< 124 / 147 >

この作品をシェア

pagetop