ねえ、私を見て
第8章 俺の子供だよ
男の子の涙って、初めて見た。

純粋で、素直で、涙が澄んでいるように見えた。

あの涙を私は、受け取る事ができなかった。


「澤田さん。」

「は、はい!」

「これ、チェックお願いします。」

隣のデスクの日奈人君は、無事卒論を終わらせ、仕事に戻って来た。

あれだけくららさんと呼んでいた日奈人君は、私の事を澤田さんと呼ぶようになった。

「OKです。」

「ありがとうございます。」

彼の笑顔を見る度に、これでよかったのだと、自分に言い聞かせた。


『もう終わりなんですね。』

日奈人君は、震える声でそう言った。

『ごめんね。本当にごめん。』

私は謝る事しかできなかった。

それで日奈人君は、背中を向けて行ってしまった。
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