ねえ、私を見て
「そんなに急いで帰るって、何かあったの?」

「夫が出張から帰ってくるのよ。」

洋服を持って着ようした時だった。

日奈人君が後ろから抱きしめてきた。

「帰したくないなぁ。」

胸がドキッとした。

「困るよ。」

「困らせたい。くららさんの事、もっともっと。」

若い子の我が侭は、時に甘美な言葉に聞こえる。

「ごめんなさい。今日は本当に帰らなきゃいけないのよ。」

「分かった。」

日奈人君は腕を放すと、立ち上がった。

「起きるの?」

「うん。くららさんのいない部屋にいたって、虚しいだけだよ。」

その可愛さに、キュンとする。

「本当に、ごめんね。」

私には夫がいて、日奈人君との関係をバレないようにする為にも、夫を優先しなければならない事は解っている。
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