ねえ、私を見て
手を繋がれ、連れて行かれたのは、ホテルだった。

「ねえ、日奈人君。私今から、夕食の買い物……」

「付き合うよ。後で。」

冷静沈着な瞳が私を見降ろしている。

「もしかして、『親戚の子』だって言った事、気にしているの?」

日奈人君は、目を伏せた。

「あの時は、仕方なかったんだよ。」

「うん、分かってる。」

微妙な風が、二人の間を吹き抜ける。

「くららさん。俺達の関係って、何?」

「何って、付き合っているじゃない。」

「本当?本当にそう思っている?」

寂しそうな日奈人君の顔があった。

「ごめん。くららさんは、結婚していて、仕事も持って自立しているのに、俺、何も持っていなくて。」

「当たり前じゃない。まだ大学生だもの。」

私は日奈人君をぎゅっと、抱きしめた。
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