政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「理仁様も菜摘様がお帰りになるのを楽しみにされていますよ」
口ではそう言うが、本当にそうなのかと疑いたくなる。そもそも農園を救うのと引き換えに菜摘をほしいというのが信じられない。なにか裏があるのではないかと。
「この家も、菜摘さんが住みたいとおっしゃっていた通りに造ったのですから」
「私はほんの冗談のつもりというか、そのくらいわがままな女だからやめた方がいいと思ってもらいたくて言っただけなんです」
菜摘に対するちょっとした興味も、それで薄れるだろうと。
「でも、理仁様はそれを実現させた。つまり本気です」
美代子は穏やかに微笑みながら菜摘を諭すように言った。
理仁に近い場所にいる美代子の言葉に、少なからず気持ちが揺れる。
「ご友人に空間デザインの専門家がいらっしゃいましてね、それはもう熱心に相談して造り上げたんですよ」