政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「今日はフレーバーティーにいたしました」
理仁は早速カップを鼻に近づけ、軽く嗅ぐような仕草をする。
「バニラビーンズのいい香りだ」
つられて菜摘も香りをたしかめたら、うっとりするほど甘くて、それだけで心が華やいだ。
いつものように美代子が用意した朝食がテーブルに並べられていく。フレッシュジュースに新鮮な生野菜のサラダ。近所のベーカリー工房『福ちゃん』で人気だというメロンパンや塩バターロール、ブリオッシュもあり、スクランブルエッグはチーズ入りのふわふわだ。
(もしも日高さんと結婚したら、こんな朝食を私が作ってあげるのかな)
無意識にそんなことを想像してしまい、慌てて頭を振って追い出した。いったいなにを考えているのか。
「大地くんは今日も農園?」
理仁に〝大地〟で呼び掛けられたため反応が遅れ、妙な間が空く。ハッとして取り繕ったものの、うわの空だったためなにを聞かれたのかわからない。
「なにか悩み事?」