政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

菜摘の心を見透かすような目に戸惑う。まるですべてを知られているような気になったが、大地だとばれたのは美代子にだけ。


「な、悩みなんてなにも」


なんとかそう返して紅茶に口をつける。


「熱っ」


淹れたてのため、あやうく唇を火傷しそうになった。それもこれも動揺しているからにほかならない。


「大丈夫か?」


大したことでもないのに、理仁が席を立って菜摘の元にやって来る。心配そうに唇を凝視した。


「大丈夫ですから」


わざわざ確認するまでもない。大袈裟もいいところだろう。

ところが理仁は、「ちょっと見せて」と菜摘の手を唇から離す。間近でじっと見られ、目のやり場がない。それでなくても理仁は端正な顔立ちをしているため、近づかれるだけでも心臓に悪いのだ。
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