政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「赤くはなってないな」


理仁はそう言って、あろうことか菜摘の唇を親指でサッと撫でた。
びっくりして肩が弾む。

(ふ、普通、同性相手にそんなこと……する?)

理仁にとって、今の菜摘は大地なのだ。

離れていく理仁を戸惑いの目で見る。


「熱くて飲めないなら、俺がふうふうしてあげようか」
「なっ、なにを言ってるんですか」


いたずらっぽい表情に不覚にもドキッとする。


「冗談」


理仁はクスッと鼻を鳴らして笑い、自分の席に戻っていった。
いったいどういうつもりなのか。出会った当初から不可解な言動の多い理仁だが、今朝はそれにも増してなぞだ。


「じゃ、食べようか」


理仁は「いただきます」と言ってから塩バターロールを手に取った。
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