政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「そう言わずに、ほら」
ずんずん足を進めて菜摘に近づき、理仁が穿いているのと似たようなデザインの水着を押しつける。
「ほんとにいいですから」
「この水着が気に入らない?」
「そういう問題ではなく」
その水着は着られないのだ。それは菜摘の嘘が発端ではあるけれど。
「それじゃ、プールサイドで見ているだけでもいい。気分転換に付き合って」
むんずと腕を掴まれ、菜摘は理仁に引きずられるようにしてリビングの窓からルーフバルコニーに連れ出された。
空調の効いた室内から出た途端、湿気を孕んだ空気に包まれる。傾きかけている太陽はその光を弱める気配がなく、焼けつきそうな日差しで芝生も焦がしてしまいそう。
板張りになったルーフの下にはカウチソファやテーブルが置かれ、その向こうは太陽光が揺らめくプールがある。
菜摘の視界の隅で、理仁は着ていたパーカーを脱ぎ捨てた。それをソファにポーンと放った彼を何気なく見たその体に、目が釘づけになった。