政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

細身だと思っていたが、胸はほどよく隆起し腹筋もかすかに割れている。逞しい筋肉質のシルエットに胸が高鳴って仕方がない。

理仁はプールサイドから美しい弧を描いて水に飛び込んだ。細かいしぶきが太陽にあたってキラキラ光る。夏の午後にふさわしい景色だった。

ゆったりと泳ぎ始めた理仁は、規則正しいクロールで涼やかな水音を立てる。

菜摘はしばらく突っ立ったまま、暑さも忘れて彼が優雅に泳ぐ姿を見つめていた。


(本当に綺麗……)


どれくらいそうしていたか、ふと我に返りカウチソファに腰を下ろす。食い入るように見ていたことを思い出して恥ずかしくなり、手持無沙汰に理仁が放ったパーカーを畳んだ。

(って、大地が畳んだりしたらおかしくない? やっぱりやめよう)

綺麗にしたものをいったん崩したが、再び気が変わってもう一度畳みなおす。

(私、なにやってるの)

菜摘が不可解な行動になるのは、理仁の鍛え上げられた体を見たせいだろう。さっきから胸が騒いでうるさい。
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