政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
(男の人の体を見てドキドキするなんて私、ヘンタイ?)
気を反らそうと目をあちらこちらに向けて所在なくしていたら、泳ぎを止めた理仁が水面から顔を出して菜摘に手招きをしてきた。
濡れた髪をかき上げる仕草が妙に色っぽい。
「なんでしょうか」
「足だけでもいいから、キミもプールに入ったらどうだ。気持ちいいぞ」
じっとしていても汗ばむ暑さのため、心が揺れる誘惑だ。
「いいえ、大丈夫です」
たしかに気持ちよさそうではあるけれど入るわけにはいかない。
「そう言わずにおいで」
邪気のない笑みを浮かべ、なおも大きく手招きをする。
(……少しだけならいいかな)