政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
(……〝本当は〟なに? まさか――)
ドキドキと鼓動が高まり始め、胸が張り詰める。
その先に続く言葉が、菜摘の予想するものズバリだとしたら一巻の終わりだ。
「男に興味があるって言ったらどうする?」
「……え?」
「菜摘さんを好きだと見せかけて、本当は大地くんに興味があると言ったら?」
「な、な……なにを言って……」
想像の斜め上をいく理仁の言葉が、菜摘の頭をさらに混乱させる。
(本気でそんなこと言ってるの? 日高さんが女性じゃなく、男性を好き?)
今朝、菜摘の唇を指先で意味ありげに撫でた光景が頭をよぎった。あのとき向けられた熱っぽい視線が今の言葉の裏づけに思えて戸惑う。
「だから、菜摘さんが帰らないのならそれでもいい」
「ちょ、ちょっと待ってください」
菜摘の手首を掴んだ手に力が込められる。ぐいと引かれて、さらにふたりの距離が縮まった。
菜摘を抱き寄せた理仁が髪にキスを落とす。
このままでは妙な事態に発展してしまうのではないかと気が気でない。