政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

(ど、どうしよう……!)

理仁の胸を押し返そうとするが、ビクともしない。それもそのはず。逞しい腕にそうされては、女の力ではどうにもならないのだ。

理仁は菜摘のメガネをそっと外してプールサイドに置き、頬に優しく触れた。メガネなしで合った視線がものすごく熱い。

(このままじゃキスされちゃう――)


「待ってください!」


声を振り絞った。それも、まるっきり素の菜摘の声だ。
その大きさに驚いたのか、それともこれまでとの違いに驚いたのか、理仁の目が点になる。


「わ、私、大地じゃないんです。菜摘なんです」


もう破れかぶれだった。予想外の展開を脱するには、白状する以外になかった。

菜摘を抱きしめていた腕の力が弱まる。


「嘘をついて騙してごめんなさい」


菜摘は理仁から一歩離れて頭を下げた。
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