政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

意外にも冷静な声だった。……いや、もしかしたら呆れているのかもしれない。


「うちです。佐々良の」
『やっぱりね。そうだとは思ったけど、連絡はほしかった』
「本当にごめんなさい」


この時間に日高の家に帰っていないのは初めてのため、理仁が心配して当然。メッセージなり電話なりできただろうから、台風に備えていたというのは言い訳にしかならない。


「今夜はもう遅いので、このままこっちにいますね」


明日帰ればいいだろう。そう思って言ったものの。


『いや、今から迎えに行く』
「え!? 大丈夫ですから!」
『いいから、そこで待ってて』
「ちょっ……」


菜摘が呼び止める間もなく通話が切れる。

(これから迎えなんて……)

理仁がここまで迎えにくる時間と、そこから自宅まで戻る時間を考えたら十時は回るだろう。
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