政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

無音になったスマートフォンを耳にあてたまま放心状態でいたら、菜摘の後にお風呂を使った大地がタオルで髪をごしごし拭きながらやって来た。


「ねえちゃんも飲むか?」


手にしていた缶ビールのうち一本を菜摘の前のテーブルに置く。


「あ、ううん、やめておこうかな」


理仁が迎えにくるというのに、自分だけ一杯やるわけにはいかない。


「なんで。大仕事した後の一杯はたまんないぞ」
「大学生のくせに生意気ね」


大地のひと言に思わず吹き出した。


「今日はここに泊まってくんだろ? ってか、ねえちゃんの家はここか」


自分で言って自分にツッコミを入れる。
大地の頭の中に菜摘の結婚という概念はないのだろう。そのうち帰ってくると思っているに違いない。
大地は畳の上に胡坐をかいて座り、缶ビールのプルタブを開けた。プシュッという音が小気味いい。
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