政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「これから日高さん、迎えにくるって」
「え? 今から? ここに?」
単語をひとつずつ区切る言い方が驚きを表していた。
(やっぱりこんな時間に来なくてもって思うよね)
菜摘自身もそうなのだから、大地が目を丸くするのも無理はない。
「へぇ、ねえちゃんのこと好きっての、意外とマジなのかもな。で、ねえちゃんもまんざらでもなさそうだね」
「や、やだ、なによ」
図星を突かれてうろたえる。五つも年下の弟に見透かされたようで恥ずかしい。
「いくら農園の借金のことがあるにしても、嫌だったら今夜だってあっちの家に帰らないだろ」
「それは、迎えにくるっていうから、ね……」
声がだんだんと尻つぼみになっていく。自覚したばかりの想いを弟にひけらかすのは、まだ照れが先行するのだ。
「ま、俺はねえちゃんの思うようにすればいいと思ってるからさ。自分が幸せになる道を選んでよ」