政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

◇◇◇◇◇

約三十分後、菜摘は迎えにきた理仁の車に乗り込んだ。


「連絡もせずにごめんなさい」


玄関で真っ先に謝ったが、それではまだ足りない気がしていた。本気で心配していたのがその表情からわかったから。でもその半面、そんな様子の彼を見て密かにうれしかったのは内緒だ。


「帰ったらいないから心配したよ。美代子さんもなにも聞いてないって言うし、いくら電話しても出ないし」
「ほんとにごめんなさい。台風が近づいてるから、その対策をしなくちゃならなくて」
「あぁ台風か。そういえば天気予報で盛んに言ってたな。備えを十分にって。農家には切実な問題だ。連絡をくれれば俺も手伝ったのに」
「そういうわけにはいかないです」


忙しい理仁の手を煩わせるわけにはいかない。


「俺が正体を暴いたから嫌になって、いよいよ本気で逃げたかと思ったよ」
「……逃げませんから」
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