政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

◇◇◇◇◇

翌朝、菜摘がキッチンで紅茶の準備をしていると、ワイシャツに着替えを済ませた理仁が起きてきた。


「菜摘、おはよう」


後ろからふわりと抱きしめられ、髪をアップにしていたうなじにキスが落とされる。


「お、おはようございます」


正体を明かしてからのこの三日、理仁は隙を突いては菜摘の額や頬はもちろん、耳や髪にキスをする。そのどれもが唐突なため菜摘に避ける間もなく、すべてされるがまま。そのたびに頬を赤くして体を硬直させてばかりだ。

そのうち唇にも不意打ちでキスされてしまうのではないかと内心ハラハラしているが、理仁は自分の言葉を忠実に守っている。軽い調子で菜摘にプロポーズしてきたとは思えない真面目さだった。


「美代子さんは?」
「いつものパン屋さんに出掛けてます」


彼女は、近所のベーカリーショップへ朝食用のパンを調達しに出かけている。
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