政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「なんだ、それならもう一回」
そう言って菜摘の体を反転させ、今度は頬にキスをした。あやうく唇の際だったため、菜摘の心臓が大きな音を立てる。
ところがどぎまぎしているのは菜摘だけで、理仁の興味は「いい匂いだな」と紅茶へ移った。
「今朝はイングリッシュ・ブレックファーストです」
うっかり理仁に向いていた意識を強制的に紅茶に向ける。
「今、起こしにいこうと思っていたところでした」
美代子が用意していた茶葉に熱湯を注いだところ。理仁が来たのはグッドタイミングだ。
「なんだ。それならもう少しゆっくり寝ていればよかった」
「え?」
「そうすれば菜摘に起こしてもらえたんだろう? しくじったな」
本気でがっかりしたような顔をする理仁に、菜摘の心はまたしても大きく乱される。