政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「べ、べつにただ起こすだけですから」
「その、ただ起こされるだけってのを体験したかったって言ってるんだよ。新婚のイチャイチャってやつをね」
理仁がニヤリと笑う。完全に菜摘をからかっている顔だ。ドキドキさせられるばかりで悔しい。
「も、もう、変なこと言わないでください」
理仁から目を逸らし、ティーポットを持つ。そろそろ蒸らし時間も十分だろう。
ところが手もとが狂い、カップに注ぐはずの紅茶をソーサーにこぼしてしまった。
「あぁっ……!」
「動揺させちゃったか。そこはカップじゃないぞ」
「わ、わかってます」
クスクス笑われ、つくづくカッコ悪い。
理仁は布巾をさっと取り、素早くこぼれた紅茶を拭った。
「かわいいな、菜摘は」
「そうやって私で遊ばないでください」
「遊んでないよ。早く菜摘と本物の新婚になって、もっとイチャつきたいだけだ」